不妊症
妊娠を希望しているにも関わらず、ある期間(日本では2年間と定義されています)、
妊娠の成立を見ない状態を
不妊症といいます。
しかし、明らかな不妊原因が存在する場合は、期間は関係ありません。
また、生殖機能が正常な男女では、1年以内に90%近くが妊娠し、不妊症の頻度は10組の男女に約 1組と言われています。
したがって、2年も待たずに、妊娠を希望するときから、身体の状態を知り、妊娠に向けてすすんでゆきましょう。
不妊症の検査には、基礎体温、内診、ホルモン検査、子宮卵管造影、超音波検査などがありますが、
一度に全ての検査ができるわけではありません。
卵巣のペースに応じて、検査やタイミングを計画してゆきますが、各々、必要となる検査・治療は異なります。
あせらず、しかしペース良く、話し合いながら計画してゆきましょう。
また、せっかく妊娠しても、
流産を繰り返す場合には、ご夫婦に何らかの因子が存在することがあります。
次の妊娠を継続させるために、予め検査を行い、必要があれば対策をとりましょう。
主な病因 |
当院での治療方法 |
排卵因子 排卵障害、黄体機能不全、卵巣嚢腫など |
それぞれの原因、障害の程度、その他、必要性に応じた治療を行います。
各種排卵誘発剤(内服薬や注射薬)、ホルモン療法、その他の原因疾患に対する治療、
排卵誘発に併用する治療などの他に、漢方療法などを行うこともあります。
卵巣嚢腫が見つかった場合、状況によっては手術を先行することもあります。
それぞれの治療には副作用やリスクもありますから、
治療に際しては、副作用を説明しながら行います。納得したうえで、治療を行いましょう。 |
卵管因子 卵管閉鎖、卵管采癒着、卵管水腫など |
現在は、体外受精・胚移植といった高度生殖医療が主流になってきています。
しかし、卵管の状態によっては、癒着剥離術や卵管開口術などの手術療法を選択することもあります。
いずれにせよ、妊娠の重要な条件となる卵管に問題がある場合は、積極的治療が必要になると考えてください。
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子宮因子 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど |
子宮因子の状況によっては、手術を必要とすることもありますが、
必ずしも手術を必要とせず、不妊治療を先行させることもあります。
筋腫などの位置、大きさ、妊娠した場合のリスクなどを考慮して、それぞれに応じた治療を選択します。
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頚管因子 頚管粘液分泌不全など |
通常、排卵前後に、精子を通過させやすくするために子宮頚管粘液が分泌されますが、粘液の状況によっては、
充分な精子が通過出来ない場合もあります。
ヒューナーテスト(性交後試験)を行って所見が悪い場合、卵管因子がなければ人工授精を施行します。
(抗精抗体が陽性の場合は、体外受精を考慮します。)
人工授精とは、排卵前後に精子を子宮腔内まで注入する方法です。
排卵誘発の方法を種々選択しながら、人工授精を6〜7回施行して、それでも妊娠が成立しない場合は、
次の治療法について考えてゆく必要があるでしょう。
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男性因子 乏精子症、無精子症、精子無力症など |
人工授精、体外受精、顕微授精など、程度に応じて施行することになります。
重症の場合は、泌尿器科に紹介することになります。
待機療法として、漢方療法などを行う事もあります。
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原因が不明な場合 |
排卵誘発を行ったり、タイミング指導、人工授精、体外受精などを施行します。
年齢、不妊暦、不妊治療暦を考慮しながら行いますが、いずれの治療も実施回数に伴って妊娠率が低下するので、
何十回も実施することに意味はありません。
人工授精
排卵時期に精子を子宮内に注入すること。卵管膨大部で受精が成立するため、
卵管に問題がないことが前提となります。当院では、夫婦間における人工授精(AIH)のみ行っています。
体外受精・胚移植
卵巣から直接卵子を採取し、培養皿で精子と一緒に培養し、受精させ、その受精卵を
子宮に戻す方法。当院では、夫婦間においてのみ行います。
必要に応じ、胚凍結、顕微授精などを行うこともあります。
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その他 免疫因子など |